「猫と触れ合いながら癒されたい」「保護猫を迎えたい」そんな人にぴったりの場所があります。
越谷市にある「保護猫カフェさくら」1号店・2号店は、飼い主がいない猫の不妊手術を専門とする「いながき動物病院」が運営する譲渡型の保護猫カフェです。
スタッフが全員ボランティアという点や、2号店がFIV(猫エイズ)キャリア猫専門という全国でも珍しい形態で、メディアからも注目を集めています。
今回は、いながき動物病院の院長で保護猫カフェオーナーでもある稲垣さんと、カフェ運営を支えるスタッフの星野さんにお話を伺いました。開店の経緯や日々の運営、そして「さくら」ならではの魅力について詳しくご紹介します。
目次
ボランティア(保護主)を応援するために「保護猫カフェさくら」誕生

いながき動物病院では、越谷市の本院で毎週、県外の分院で定期的に野良猫を中心とした不妊手術を行っています(いながき動物病院の記事はこちら)。
稲垣さんが「保護猫カフェさくら」を始めたきっかけは、同じ病院の獣医師である妻・桃子さんの「保護猫カフェを作りたい」という一言でした。
当初はあまり気乗りしなかったという稲垣さん。しかし、不妊手術をするたびに保護猫が増えるという現実に直面し、考えが変わったそうです。
「手術を頑張っているボランティアさんの中には、毎週のように来ている方もいるんですよ。手術をさせればさせるほど保護しなきゃいけない猫もどうしても増えてしまう。少しでも保護猫を減らすためには、譲渡につなげる保護猫カフェを運営して応援しようと思ったんです。」
店名は不妊手術のしるし「さくら猫」から
保護猫カフェさくら1号店は2019年5月に開店。いながき動物病院が野良猫の不妊手術専門病院ということもあって「さくら猫」から店名をつけたそうです。
さくら猫とは、TNR(野良猫を捕まえて不妊手術をし、元の場所に戻す活動)の際に不妊手術後の目印として片耳の先端にV字のカットをされた猫のことです。通常オスは右耳に、メスは左耳にカットが入り、耳の先端が桜の花びらに似ていることからさくら猫と呼ばれています。

病院とカフェの橋渡し役、星野さん
保護猫カフェさくらといながき動物病院の橋渡し役として活躍しているのが、病院スタッフでもある星野さんです。
もともと猫の保護活動に強い関心があり、東日本大震災後は保護シェルターに手伝いに行っていたという星野さん。ある日猫好きの知人から、「いながき動物病院が出張不妊手術のボランティア(ドライバー)を探している」と聞き応募をしたそうです。
「もともと猫のために何かしたいと思っていたのと、運転が好きだったので手をあげました。ドライバーだけでいいと言われていましたが、『行ったからにはやりますよ』と言って、不妊手術のお手伝いも始めました」
「ボランティアとして関わってから3年くらいたった頃に、稲垣先生から保護猫カフェを開くという話を聞いたんです。先生の構想ではスタッフは全員ボランティアということだったので、『ボランティアやります』と手をあげて、カフェの立ち上げから手伝うようになりました」
その後、働きぶりが認められ病院のスタッフにならないかと誘われたそうです。現在は病院のスタッフ、もともとの本業である医療関係のライター、保護猫カフェさくらのまとめ役として、多忙な日々を過ごしながら多くの猫と人を繋いでいます。
保護猫カフェさくらの3つの特徴

保護猫カフェさくらの大きな特徴は、「大人の猫」「ボランティア主体」「期限付き」です。
大人の猫のみが在籍
保護猫カフェさくらにいるのは9カ月以上の猫だけです。譲渡されにくい大人の猫やハンデがある猫を積極的に入店させたいという稲垣さんの考えからです。ちなみに子猫を保護した場合は、さくら主催の譲渡会を利用できます。
ボランティア主体で運営を支える
保護猫カフェさくらには160名以上のボランティアスタッフが在籍しています。
開店当初のスタッフは60名ほどで、そのほとんどが猫の保護主でしたが、今ではスタッフの背景もさまざまです。
「今は保護主さんだけでなく、保護猫カフェに遊びに来た人たちが応募してくれます。大学生もけっこう多いですね。卒業しちゃうと仕事で来られなくなる人も多いですが、経験になってくれれば嬉しいです」(稲垣さん)
期限付きで預かるシステム
稲垣さんが保護猫カフェさくらを立ち上げる際に考えていたことは、「まず病院の運営があってこそ、保護猫カフェの経営が成り立つ」という構図です。そこでスタッフを全員ボランティアとするだけでなく、猫を預かる「期限付き預かり」システムを導入しました。
「猫がもらわれなかった時や、病気になった時に、一生飼育する責任が病院にくると保護猫カフェを続けるのが難しくなります。期限を決めて預かるからこそ、『みんなでかんばって里親を探しましょう。もし期限内に里親さんが見つからない場合はお返しします』という約束をしているんです」
預かり期間は1号店が入店してから1年半、2号店は2年半です。
猫の入店時に必要なウイルス検査やワクチンは保護主さんが行い、入店中の餌代・おもちゃ代・その他雑費はカフェが負担しています。
保護猫カフェさくらでは期限内に里親さんを見つけるために「推しにゃんプロジェクト」を行っています。これは2週間〜1カ月ほどの期間を決めて、特定の猫をSNSなどで集中的に「推す」取り組みです。
推しにゃん活動の効果は高く、ほとんどの猫が期限内に譲渡されるといいます。
「在籍期間中になかなかご縁がない猫には、カフェの総力をあげてアピールをしまくるんです(笑)。すると不思議なことに、今までカフェに来たことがない方が『写真を見て気になりました』と来てくれることがあります」(星野さん)

個性豊かな2つの店舗
保護猫カフェさくらには1号店、2号店があり、それぞれ魅力的な空間になっています。スリッパに履き替え清潔感があふれる店内に入ると、動物特有の臭いがまったくないことに驚かされます。
1号店(2019年5月開店)

1号店は最大26匹までの猫を受け入れています。店内は広々としており、訪問時には23匹の猫がそれぞれ思い思いに過ごしていました。キャットタワーやケージの上にいる猫を見たい場合は、はしごを使って触れ合うこともできます。
夜間は、猫たちをそれぞれの大きめのケージに入れます。これはトイレの排泄物をしっかり確認することで体調管理がしやすいという利点があるからです。さらに店内の両端には3つずつトイレが設置されており、システムトイレの砂や固まる砂など、猫の好みに合わせて複数用意されていました。
一般的に「猫を飼う場合は頭数+1個のトイレを置くことが望ましい」とされています。その点でも保護猫カフェさくらは、猫にとって快適そうな環境でした。
2号店(2021年4月開店)FIVキャリア猫専門店

2号店は、FIV(猫エイズ)キャリア猫を専門に受け入れている店舗です。
FIVキャリア猫とは、猫エイズウイルスに感染している猫のことです。主に猫同士の激しいケンカなどで感染し、人間には感染しません。室内飼育でストレスが少ない環境下では、感染しても発症せずに生涯をまっとうできる猫も多くいます。
2号店では最大で16匹の猫を受け入れ可能です。1号店よりやや狭いこともあり、猫のストレス軽減のため少なめに設定しているそうです。設備は1号店とほぼ同じく、頭数分のケージを設置し、夜はケージ内で過ごします。
2号店が誕生した背景には、コロナ禍で1号店の入店数を大幅に制限せざるを得なかった事情があったといいます。
「コロナで入店制限をする必要があったので、20人から6人に規制したんです。2時間~3時間待ちになることもあり、結局入れないお客さんも出てきてしまって…。そうなると猫のチャンスを奪っちゃうなと思いました。店舗を増やすにはリスクもありましたが、里親になりたい人や猫と触れ合いたい人が来られない状況は避けたかった。じゃなかったら、あんなに近くに2店舗目を作る必要はなかったですから(笑)」(稲垣さん)
FIVキャリア猫への偏見をなくしたい
2号店を、「FIVキャリア猫専門」にしたのは、猫エイズに対する偏見を解消したいという思いからでした。
「FIVウイルス陽性っていうだけで、『すぐ死んじゃうの?』とか『怖い』というイメージを持つ人が多くて。実際はストレスの少ない環境なら元気に過ごせる猫がたくさんいるんです。誤解をなくす場所が必要だよねってボランティアの人たちとも話して、FIVキャリア猫専門の店舗にしました」(稲垣さん)

オープンから3年たち譲渡が進んできた
2号店では在籍期限を長めに設定しています。FIVキャリア猫は譲渡されにくいケースが多いためです。実際、2号店がオープンしてから3年ほどは譲渡が進まなかったそうです。
しかし、ここ数か月は譲渡数が一気に増加しました。
「2024年の9月~12月には10匹が卒業して里親さんが見つかり『猫がいない!』となることもありました(笑)」(星野さん)
新聞などの各種メディアで取り上げられることも多くなり、FIVキャリア猫への偏見が少しずつ減っていると実感しているそうです。
「実際に会ってみると『普通の猫と変わらないね』と言ってくださる方が多いです。だからこそ、まずは会ってもらうことが大事なんだと思います」(稲垣さん)
2号店はリピーターと新規のお客さんがほぼ半々で訪れており、星野さんは「FIVキャリア猫のことをもっと広めていきたい」と今後の展望を語ってくれました。
愛情と工夫で運営を支えるボランティアスタッフ

保護猫カフェさくらでは、シフト制やマニュアルを導入するなどの工夫をしています。またそれぞれのスタッフが「猫のためになること」を探し、得意なことを活かして運営を支えています。
三部制のシフトで清潔な状態をキープ
保護猫カフェのスタッフは、原則10時~12時、12時~17時、17時~20時半ごろの三部制でお世話をしています。一部は3~4人、二部は2~3人、三部は3~4人という固定シフト制で、スタッフは週1回や隔週1回など、自分の担当曜日を決めて参加します。
「カフェが常に清潔に保たれているのは、こうした多くの人の手が行き届いているからこそです。猫のおしっこは臭いが強いですが、空気清浄機を使ったり、こまめに掃除をすればほとんど気にならなくなります」(星野さん)
また曜日ごとにLINEグループがあり、そこで出たアイデアや意見を班長が取りまとめて、班長同士のグループLINEで話し合いをしているそうです。
猫のために「できること」を自ら考えるスタッフ
保護猫カフェさくらには、「猫のために何かしたい」と自主的に動く人がたくさんいます。
たとえば、猫たちを紹介するプロフィール班や、SNSで情報発信するSNS班があり、スタッフ自身のアイデアで猫の魅力をアピールしています。
また、カフェの保護猫が付けている名前入りの首輪はスタッフの手作りです。他にもカフェで売られているアクセサリーやグッズ類を自主的に作成している人もいるそうです。
「みなさんとても積極的で『やりたい』って言ってくれるので、それぞれの得意分野でお任せしています。お客様にも好評です」(星野さん)

お客様対応のマニュアルづくり
保護猫カフェさくらには、受付業務、禁止事項、行動指針についてまとめられた「スタッフ用マニュアル」も存在します。
「接客の基本や掃除の仕方などをマニュアルにしています。猫への接し方を伝えるための『接客指針』も作りました。これには『お客様にどう伝えるか』が具体的に書いてあります。お客様に楽しんでもらえて初めて、猫の可愛さや保護猫を引き取ることへの理解が広がると思うので、楽しんでいただける接客を心がけています」(星野さん)
実際にスタッフの方からは「マニュアルがあるからわかりやすい」「猫のことを教えてもらえるので、勉強になる」など好評です。
保護主以外も続々とスタッフに
たくさんの人が集まるこのカフェには、保護主だけでなく、お客さんや里親さんなど、幅広い人たちがボランティアスタッフとして参加しています。
「とくに常連さんがスタッフになることが多いですね。開店当初はこちらからスカウトしたりすることもありました(笑)」(星野さん)
お客さんからスタッフになった方に話を聞くと、もともと保護猫に興味がありインターネット検索でさくらを見つけたそうです。
「『お世話』というより、むしろ癒されに来ている感じです(笑)。近いうちにペット可の物件に引っ越して、保護猫を引き取りたいと思っています」
こうして周りには自然と里親候補の方も増えていき、さくらの環境を支える力になっているようです。
新しい家族との出会いをサポートする仕組み

これまでに保護猫さくらで譲渡した猫の数は1号店で310匹・2号店で40匹にのぼります(2024年12月取材時点)。譲渡に関しての決定権は猫の保護主さんにあり、基本的に以下のような手順で進めます。
譲渡の流れ
1 保護主に連絡(アンケート記入)
2 保護主から希望者に連絡(家族構成や脱走対策などの詳細確認)
3 希望者宅に訪問もしくは面談
4 トライアル(通常2週間・延長可)
5 正式譲渡
譲渡料金・サポート体制
譲渡料金は保護猫カフェさくらからの場合は2024年12月取材時点で44,000円、さくら主催の譲渡会(オンライン含む)の場合は30,000円です。
譲渡後のサポート体制も万全
里親になった後も保護主さんやカフェとの交流は続きます。譲渡後は月1回、1年経過後は1~2回保護主さんへの近況報告する機会があるため、その際に相談が可能です。
さくらの公式LINEでも質問を受け付けています。
「お腹を壊した、爪が切れない、隠れて出てこないなど相談はさまざまです。さくらにいた猫なら個性を把握しているのでアドバイスができるんです。猫を初めて飼う里親さんからは『相談できるのはすごく助かる』と言っていただきました」(星野さん)
保護主さんに話を聞くと、相談以外にも年末や年明けなどのタイミングで写真を送ってくれることが多いそうです。
「さくらは繋がりがすごく強いです。公式LINEには里親さんから節目ごとにメッセージが届きます。送っていただいた写真や近況報告は『幸せ便り』としてSNSにも投稿しているんです。人懐こい猫はもちろん、人見知りでケージから出てこられなかった猫が、譲渡先で幸せに暮らしている姿が見られるのは本当に嬉しいですね」(星野さん)
譲渡促進のための特別な取り組み

保護猫カフェさくらでは、「お世話体験プログラム」「永年預かり制度」「オンライン譲渡会&ライブ配信」の3つを中心に、譲渡促進のためのさまざまな工夫を行っています。
1. お世話体験プログラム
参加できる曜日・時間帯は保護猫さくらのホームページに記載されています。長期休みは予約があいつぐ人気企画です(お世話体験プログラムの詳細はこちら)。
これまで100組以上が参加しており、自由研究の一環として訪れるお子さんや、初めて猫を飼う前に予習をしたい人、スタッフ希望者などが主に利用するといいます。
「実際にトイレの掃除などを経験して『猫を飼う覚悟が決まりました』と言ってくれた方もいました」(星野さん)
お世話してみないとわからないことも多いですし、疑問点をスタッフに直接聞けるのは魅力的です。
2. 永年預かり制度
永年預かり制度は、高齢や継続した治療が必要などのハンデを抱えている「譲渡されにくい猫」と、単身者や60歳以上の「譲渡してもらいにくい人」とをつなぐ制度です。
この制度の最大の特徴は、やむを得ない事情で終生飼育が困難になった際に、保護主に猫を返せるという点です。年齢の上限は70代前半ほどで、後継人が必要になる場合もありますが、今まで年齢であきらめていた人たちにも里親になれるチャンスが広がります。
永年預かり制度対象の猫は保護主さんが決めています。脱走などの非常事態に駆け付けられるよう、譲渡先の地域を制限している場合が多いため、詳細はHPで確認が必要です(永年預かり制度の詳細はこちら)。
2024年12月取材時点で10件ほど利用があり、これまで猫を返す事例は一度もないとのことです。
3. ライブ配信とオンライン譲渡会
コロナでカフェが休業せざるを得なかった際に「猫の姿を届けたい」との思いから始まったのがインスタでのライブ配信でした。最初は手探り状態だったものの、今では1号店でほぼ毎日配信し、約1時間かけて在籍している全匹の猫を映しているそうです。
「毎回楽しみにしてくださる方もいて、コロナ禍の譲渡がすごく多かったんです。SNSの力ってすごいねってみんなで話して、配信を続けています」(星野さん)
オンライン譲渡会も、コロナ禍で譲渡会が中止になったのをきっかけに始めました。
オンライン譲渡会は、カフェのバックヤードから、連れてきてもらった猫を映すパターンと、スタッフの自宅から、里親募集している猫を紹介するパターンの2種類あります。対面譲渡会ができなかったコロナ時期には、多くの猫がオンライン譲渡会で家族が見つかりました。
「現在、オンライン譲渡会はほとんど開催されていませんが、対面の譲渡会からライブ配信し、それをアーカイブに残すことで、譲渡会にいらっしゃれなかった方にも里親募集中の猫を見ていただいています。休業時は大変でしたが、SNSに触れられたという点で学びも大きかったですね。今後も譲渡のためにできることは何でもしたいです」(星野さん)
保護猫カフェさくらの譲渡会は月2回開催しており、猫のワクチンやウイルス検査などが済んでいれば誰でも参加できます。
「譲渡会には人も集まりやすい分、里親さんが決まることも多いんです。譲渡先が見つからず困っている人は、まずは参加してほしいです」(星野さん)
「さくらの魅力」はスタッフとお客さんからの大きな愛情

保護猫カフェさくらにいる猫は人懐こい印象を受けます。
「普通の猫カフェと違って猫がお客さんに飽きるということが少ないんです。それは猫の入れ替えがあるのと、今まで人に撫でられたくても撫でられてこなかった猫も多いというのが理由かもしれません」(星野さん)
人懐こいからといって「構って構って!」という感じでもなく、落ち着いた大人猫が多いためか、それぞれの猫がマイペースにのびのび過ごしていました。さくらの猫たちは満たされた環境の中、安心しているように見えます。
こうした安心感は人にも伝わるのでしょう。2号店では会社帰りのサラリーマンがソファでうたた寝することもあるそうです。

「猫を変える」お客さんとスタッフ
さくらに来るお客さんの中には保護猫たちの心を開くことに一生懸命な人もいるそうです。
「常連さんの中にはシャーシャー言ってる猫が好きな方がいて、『大丈夫だよ、可愛いね』と声をかけながら猫じゃらしで遊んでくれます。そうすると猫がだんだん人に慣れてくるんです。スタッフよりも猫たちに詳しい常連さんもいますよ(笑)」(星野さん)
スタッフの存在も、猫たちの性格を大きく変えるといいます。
「最初はビクビクして隠れていたのに、ここでチュールをもらったり遊んでもらったりしているうちに、人間を信じるようになりました。人間で言うと『明るくなった』みたいな感じで(笑)。ここに預けて良かったなと思います。」(スタッフ兼保護主さん)
こうして多くの人から愛情を受けるうちに、保護猫の心は少しずつほどけていくようです。心にゆとりが生まれると、まるで保護猫自身が人を選ぶように、不思議なご縁がつながることもあるといいます。
「猫にも 波長が合う人がいるんでしょうね。その人を自分で引き寄せる運を持っている気がします。隠れてほとんど出てこなかったのに、たまたま姿を見せたタイミングで気に入られて譲渡につながったケースもあります」(スタッフ兼保護主さん)

トライアル決定後はお餞別が続々と集まる
保護猫カフェさくらからトライアル(お試し飼育)が決まると、常連さんが猫のごはんやおやつ、おもちゃなどのお餞別をメッセージ付きでたくさん持ってきてくれるそうです。
「トライアルが決まったことがSNSに載ると、すぐにお餞別を届けてくれる方も多いです。猫を飼えないお客さんもいるので、猫にファンがつくんです。長く在籍していた猫の場合、持ってきていただいたお餞別が多すぎて、車まで運ぶのに何度も往復することもあるんです。本当にありがたいですね」(星野さん)
一方で、「それだけもらったらプレッシャーにならない?」という疑問もあるかもしれません。しかし里親になった方に聞いてみると、「むしろ助かる」と話します。
「トライアルで慣れない環境にいるとき、おやつをあげて仲良くなるきっかけになりますし、いろんな種類のフードを試せるのが楽しいんです」(里親さん)
保護猫カフェの未来と、新たな挑戦
最後に、いながき動物病院の稲垣さんとスタッフの星野さんに「保護猫カフェさくらの今後」について伺いました。
稲垣さんの想い
「猫の不妊手術をして問題を解決できない場合は、保護猫カフェで譲渡する流れがベストだと思っています。ただ、保護猫の譲渡には時間がかかるんですよね。さくらでも5年で約300匹ですが、不妊手術なら2週間で300匹を超える数を実施することができます。飼い主のいない猫を増やさないためにも『手術』と『保護猫カフェ』の2つの選択肢を継続的に与えることが、うちの病院の役割だと考えています」
「将来的には地方にも、さくらのような保護猫カフェを作れたらいいですね。たとえば出張不妊手術をしている地域に保護猫カフェを作れば、より連携しやすくなるでしょうし、地域の方に私たちの活動を理解していただく機会も増えると思います」
「とはいえ、今すぐ店舗を増やすのは、人材面や経営面でそう簡単ではありません。それでもボランティアさんに『どんなことがあってもあきらめない』というやる気と『一緒に頑張りたい』という強い要望があれば、いつかは地方にも保護猫カフェを広げていきたいという気持ちはあります」
星野さんの想い
「とにかく保護猫カフェさくらを継続していきたい。それが私やボランティアスタッフみんなの願いです。一匹でも多くの猫ちゃんに家族を見つけてあげたいですね」
「それから、さくらを通して大人の猫や野良猫でも『人に慣れる』ということも知ってもらいたいです。ほとんどの子は慣れますし、時間のかかる子でも慣れるまでの過程を楽しむ視点を持ってもらえると、接していて楽しいと思います」
「もちろん里親になってもらえたら本当に嬉しいですが、そうでなくても、さくらに遊びに来て触れ合っていただくだけでも大歓迎です。今後は野良猫のTNRや不妊手術の大切さ、保護の仕方などもさくらを通して発信していきたいと思っています」
まずはカフェへ、気軽に足を運んでみよう

保護猫カフェさくらでは、保護主さん、ボランティアスタッフ、お客さんが一体となって保護猫を大切にし、支え合っていることがよくわかります。実際に足を運んでみると、満たされた環境でのびのびと過ごす猫たちの姿を間近で楽しめるはずです。
まずは実際にカフェで猫たちと触れ合ってみるのがおススメです。気に入った猫がいたら「推しにゃん」としてアピールし、里親探しを応援するのも楽しみ方の一つです。もっと猫に関わりたいという場合は、ボランティアとしてお世話をすることで保護猫との絆を深められます。
詳細は公式サイトから確認できますので、ぜひ一度保護猫カフェさくらを訪れてみてはいかがでしょうか。
https://catcafesakura.inagakiah.com/
1号店 〒343-0816 埼玉県越谷市弥生町3−43 プラザシティ越谷 4F
2号店 〒343-0813 埼玉県越谷市越ヶ谷1丁目16−8 桧山店舗 2階